「よし!」
心地良い音を立てて、決まったシュート。
忘れていない感覚に――掌が、震えた。



「A piece of connect」



「ナイッシュウ三井!」
パチパチと手を叩きながら、木暮が体育館に入ってきた。
「当たりめーだろ。オレを誰だと思ってんだ?」
「ははは。そうだな」

テスト真っ最中で、部活は休み。
もちろん勉強なんかする気になれなくて、誰もいない体育館に来てみた。
ここに来ると、やっぱりバスケがしたくなる。


「それにしても珍しいな。三井がいるなんて」
木暮はそんなことをぼやきながら、ボールを手にする。
「何だよ、いいじゃねえかたまには」
オレはそう言って、もう1本シュートを放った。

――3点だな。
心の中で呟く。
「……本当によく入るなぁ」
「……だから、オレは誰だっつの」


徐々に戻ってくる感覚。
シュートを打つ時のイメージ。
忘れられない、楽しさ。


やっぱり、オレはバスケが好きだ。


「勉強は良いのか?」
「……うるせーな」

「ん? お前ら何やってんだ」
赤木まで体育館にやってきた。
「赤木、珍しく三井が先にいたんだぜ」
木暮がそう言うと、赤木の顔つきが変わった。

「……雨でも降るんじゃないのか」
……そんなにオレがいると気に食わないのか。
「うるせーな! いいだろたまには!」

そう言ってから、見せつけるようにシュートを打つ。
またもや心地良い音を立てて、成功だ。

「へへん、見たか」
赤木の方へ向き直って言った。
赤木は特に顔色を変える様子もなく、口を開き出す。
「そんなことより三井、試験は良いのか試験は」
……コイツまで言いやがって。

「うるせーな! テメェはどうなんだよ! 練習してる暇あんのか?」
「オレは毎日やっとる」
さらりと答えて、赤木はボールを取った。


「……よし! 勝負だ赤木」
「フン……」
赤木はニヤリと笑って、ドリブルをする。
”オレに勝てるか?” とでも言いたげな顔だ。

「よし木暮、止めるぞ」
「あ、ああ!」
木暮とオレと、2人赤木の前に立ちはだかる。

「むっ……2対1なんて言っとらんだろ! ヒキョウだぞ」
赤木はドリブルをやめて、指を差しながらオレに言う。
「来い! ゴリラ」
低く構えて、ディフェンスの姿勢。

「誰がゴリラだぁ!!」
赤木に火がついた。
ここからが勝負。


「ははは……。三井、お前が戻ってくれて本当に良かったよ」
「……!」
木暮がいきなり、そんなことを言い出した。

「今年はいけそうな気がするんだ。絶対全国行こうな」
木暮は嬉しそうに言い放つ。
赤木を見ると、やっぱり笑っていた。


「……当たりめーだ。この三井寿が来たからには全国制覇に決まってんだろ」
ずっと、夢であり目標だった。
やっとここに戻って来れたんだ。
安西先生に、恩返しするためにも。
絶対、全国に行ってやる。


と、そのスキに。
「あーーーっ!!!」
赤木がオレと木暮を抜いて、シュートを決めていた。
「テッ、テメェ……!! ヒキョーだぞ!!」
赤木を指差して怒鳴る。

「フン、スキだらけだったぞ三井」
「くっ、くっそ……!! もう1本だ! 来いゴリラ!!」
今度こそ、絶対抜かせねえぞ。

「……ゴリラって言うなコラァ!!」
「ゴリラはゴリラだろ!!」
「お、おい2人とも!!」


―――『目標は湘北高校全国制覇! 日本一です!』
それがオレの、――オレたちの夢。



――END――




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