最後の夏が終わった。



「ひこうきぐも」



「これからは県内でも追われる立場だ。
 だが、まだ上には上がいることを忘れるな」


赤木とオレは、受験のため、部活を引退した。

「引退しよーが、落ちる奴は落ちるんだよ。バカヤロウ」
三井は相変わらずの口の悪さで、そんなことを言っていたけれど、
「三井先輩、本当は寂しいのよ」
と、マネージャーの2人がこっそり教えてくれた。


「終わったんだなぁ」


体育館から教室までの道のりも、今日はいつもと違って見える。
「ああ、終わった」
空にはもう、入道雲はでていない。

「全国制覇はできなかったけどさ」
「……ああ」
隣で赤木が頷く。
「オレ、湘北に入って良かったよ」

雲がゆっくりと流れていた。
「同感だ」

「しかし、三井は受験しないのかな」
「どうだかな。あいつはもう少しバスケがしたいんだろ」
「はは。本当に色々あったなぁ……」



「あいつらなら、できるかもしれん」
「全国制覇、だろ?」
「おう」

その時、空に一機の飛行機を見つけた。
足跡を残すかのような、一筋の飛行機雲。


「なぁ、赤木。たまに息抜きに来ような」
「当然だ。まだまだ未熟なやつらだからな」



オレ達の夢は、まだまだ続いている。



これからの道のりと同じに。



――END――




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