「手をつないで」


目覚めるとそこは、真っ白な天井。
アタシはまだぼやけている視界を広げるため、何度もまばたきをした。

えーと……。

確か今日は火曜日。
今朝、ダイエットのために走って、途中でまた安西先生に会ったんだっけ。
帰ってきてから、朝ご飯を食べて学校に来た。
そうそう、風邪気味でなんかだるかったのよね。

お昼のお弁当はあまり食べられなくて、おにぎりを一つリョータにあげたんだった。
午後からは体育でグラウンド一周して、
こんなことなら朝走らなくて良かったんじゃない、なんて思ったのよね。

それから……。

部活だ。
また桜木花道と流川がケンカして、リョータがキレて。
止めに入ったところまでは覚えてるんだけど……。



……ん?

そこまで思い出したところで横を見ると、
リョータがイスに座ってベッドにもたれかかるように眠っていた。
自分の右腕に顔を乗せて、すやすやと寝息を立てている。

もしかして、アタシ倒れた?

中学校の頃朝礼で倒れて以来、貧血には気をつけてきたんだけど。
リョータたちが保健室まで運んでくれたのかも。
やっぱり一日二回も走るのは、ちょっと無理があったかしら。

寝ているリョータを見つめる。
本当、幸せそうな顔してるわ。

と、その時リョータの左手が、アタシの左手に申し訳程度に触れた。
人差し指の先が少し当たるくらいに。

全く……。
今、何時くらいかしら。

「……アヤちゃん……」

リョータがなにやら寝言を言っている。

……まあ、いっか。

アタシはリョータの手のひらに、自分の左手を重ねた。
もう少しだけ、眠ろう。

リョータがアタシより早く起きてくれることを祈って。



――END――




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